第4章 基本設計段階におけるコミュニケーションツールとしての簡易建築モデル作成手法の開発

4.1. はじめに

BIMは建築工程における合意形成や干渉確認等を容易にする効果があるとされ、普及が進みつつある。しかし、BIMがさらに普及するには解決すべき課題が多くあるとされ、例えば、空調・衛生シミュレーションで利用する建築モデルの作成に関して、下記のような課題がある。
入力のためにより多くの費用や時間がかかる。
入力中に欠落、重複、誤認等が起こるため信頼性に欠ける。その結果、利用する際にはデータの確認が必要になる。
設備に必要のない建築のデータ(例えば、植栽、什器、鉄骨のボルトナット等)が過大に含まれる場合、読み込めないことがある。
設備に必要なデータが含まれない。あるいは含まれていても、意味や精度が異なるためそのまま利用できない。
建築データの中の特殊な形状、複雑な形状は読めないことがある。
これらの課題を改善する一つの方法として、入力における自動化、即ちソフトによる支援を進めることが考えられる。
そもそも、空調・衛生設備分野にコンピュータが入ってきたのは、今から50年以上も前である。例えば、1964年には、既にコンピュータ利用に関する報告が見られる1)。この報告には、既に冷暖房負荷計算(静的)への応用事例が述べられている。

1) 山本和夫、小坂徹ほか: 電子計算機は建築設備設計にいかに用いられるか, (社)空気調和・衛生工学会, 空気調和衛生工学,第38巻, 1964.5

また、1973年には、初のコンピュータ利用に関する特集が見られる2)。

2) 早川一也ほか: 空調計画への電算機応用(特集)、(社)空気調和・衛生工学会, 空気調和衛生工学, 第47巻, 1973.7

この報告には、表4.1に示すような空調・衛生設備におけるコンピュータの応用分野の展望が述べられている。
表4.1 空調・衛生設備における電算機応用分野
応用分野 空調 衛生
冷暖房負荷  
ダクト計算  
配管計画  
給水計画  
排水計画  
配水網計算  
機器選定
システムシミュレーション(比較)
所要年間エネルギ  
騒音計算  
積算
工程管理、設備管理、計量管理
自動作図
表において、シミュレーションが既に示され、応用が期待されていたことが分かる。現在では、実際にシミュレーションソフトが実務で利用されるに至っているが、必ずしも一般的となっていないものもある。その理由は、一つには、データ入力の煩雑さのためである。
空調・衛生シミュレーションには種々のものがあるが、BIMの利用に関して特に期待されるものが空調熱負荷計算と気流計算(CFD)である。その理由は、いずれも建築に関する入力項目が多いため、BIMが意匠側で構築され、それを空調・衛生設備側で有効に利用できれば、データ入力作業を大幅に効率化できるほか、建築との整合性も保ち易く大きなメリットが生まれるためである。
しかし、建築モデルが意匠側で作成されるとしても、例えば、設計段階での空調熱負荷計算においては、建築モデルの作成が間に合わないこともある。また、例えば、空調熱負荷計算で必要とされる建築部材の熱貫流率等が意匠側で入力されることは期待できない。 これでは、建築モデルとシミュレーションソフトの連携を実現することは困難である。その上で、建築モデルとシミュレーションソフトの連携を実現するには、一つの方法として建築モデルを設備側で作成することが考えられる。
意匠側で建築モデルが作成されるより早く、設備側で建築モデルを作成し、さまざまな条件下でシミュレーションを行うことにより、意匠側で建築モデルが固まってしまう前に、設備側から建築と設備の要点を確認・提案することができ、意匠側とのコミュニケーションをより円滑に進めることが期待できる。
設備側で必要とされる建築モデルには、意匠側で必要とされるほどの部材種類や寸法精度は必要とされないため、比較的容易に作成できると考えられる。しかし、建築モデルを手動で作成するのは、直接にシミュレーションソフトに情報を手動で入力するよりも明らかに手間がかかる。
そこで筆者らは、空調・衛生設備におけるシミュレーションを想定し、シミュレーションに必要な形状及び属性を持つ簡易建築モデル作成手法を開発した3)。本章ではその結果を述べる。

3) 三木秀樹, 向来信: 空調熱負荷計算などの用途に利用できるBIMの自動構築ソフトウェアの開発, (社)空気調和・衛生工学会 2011年度大会 学術講演会 講演論文集, 2011.8

4.2 建築設備分野における既往の研究

空調熱負荷計算における取り組みの例としては、1999年に(社)IAI日本 設備・FM分科会が、建築モデルと空調熱負荷計算の連携を試行した4)。その概要を図4.1に示す。
図4.1 建築モデルと空調熱負荷計算の連携4)

4) 今野一富ほか: 建物モデルと熱負荷計算の連携, (社)IAI日本, 1999

図において、建築モデルから情報が取得され、空調熱負荷計算で利用されていることが示されている。
建築モデルと空調熱負荷計算を連携するソフトは、IFCで表現された建築モデルから建築部材の情報を取得・表示すると共に、空調熱負荷計算ソフトで必要な情報に加工して、CSV形式で出力している。本ソフトの入力/表示画面を図4.2に示す。
図4.2 建築モデルからの情報取得ソフト4)
図において、部屋、壁、窓(ガラス)の情報が示されている。部屋については階、名称、面積、また、壁と窓については面積、方位及び室外に面するかどうかの区分等の情報が取得されている。さらに、壁が室外に面しない場合、隣接する部屋ごとに区分されて面積が取得されている。その理由は、隣接する部屋が空調室か非空調室かを、計算に反映するためである。ここで、建築モデルは手動で作成された。
また、気流計算(CFD)における取り組みの例としては、現在、(社)空気調和・衛生工学会のBIM・CFDパーツ化小委員会で試行されている5)。概要を図4.3に示す。
図4.3 建築モデルと気流計算(CFD)の連携5)

5) 河野良坪, 石崎陽児, 一ノ瀬雅之ほか: 建築環境CAE ツールにおけるBIM連携化とCFD パーツ化に関する研究, (社)空気調和・衛生工学会, 論文集No.174, pp.15-21, 2010.9

図において、BIMから建築部材と設備部材の情報が取得され、気流計算で利用されることが示されている。建築部材の情報として、壁や床等の面積、方位、熱特性等がある。ここでも、建築モデルは手動で作成された。
以上のように、既往の研究では、建築モデルが作成されれば、建築モデルから情報を取得し、シミュレーションソフトで利用できることが示されているが、建築モデル自体は手動で作成されている。

4.3 目的及び方針

空調・衛生設備におけるシミュレーションを想定した場合、建築モデルは意匠側で作成されたものを利用することが望まれるが、実際には難しい。代わりに、設備側で作成することが考えられるが、手動で作成するのは効率的でない。
そのため、本章では、空調・衛生設備におけるシミュレーションに必要な形状及び属性を持つ簡易建築モデルの作成手法を開発することを目的とし、また、下記を方針とした。
BIMの用途としては空調熱負荷計算を想定する。
建築要素として床、柱、梁、壁、開口、窓、天井、庇等の形状を作成するほか、壁と窓には属性として熱貫流率を設定する。
建築要素の寸法や、作成の要否等はパラメータとして与えることにより、建築モデルの作成において高い自由度を確保する。

4.4簡易建築モデルの作成手法に関する課題及び開発

4.4.1 建築部材の形状表現
建築部材の床、柱、梁、壁、開口、窓、天井、庇のクラスは表2.2による。
このうち、壁・開口・窓については、図4.4のように関連付けを行う。
図4.4 要素の関連付け(壁と開口と窓)
図において、壁と窓が開口を経由して関連付けられている。これにより、例えば、壁を削除すれば、壁に付属する開口や窓を探して削除するような処理ができる。
仕様書をもとに、開口に係る最小限のクラスを抽出したもの(既出除く)を表4.2に示す。
表4.2 開口に係るクラス
クラス (注: *=は抽象クラスなど、+は関連付け)
IfcElement* = IfcWall
IfcElement* = IfcWindow
IfcOpeningElement
IfcRelVoidsElement+
IfcRelFillsElement+
表において、少なくとも2種類のクラスのインスタンスを生成する必要があることが分かる。
柱や梁等の形状表現は、第2章及び第3章で用いたサーフェスモデルではなく、実体により近いソリッドモデルによることが妥当と考えた。仕様書をもとに、ソリッドモデルに係るクラスを抽出したもの(既出除く)を表4.3に示す。
表4.3 ソリッドモデルに係るクラス
クラス (注: クラス /アトリビュート >参照クラス、*=は抽象クラスなど)
IfcSolidModel* = IfcExtrudedAreaSolid
IfcExtrudedAreaSolid / SweptArea > IfcProfileDef
IfcExtrudedAreaSolid / Position > IfcAxis2Placement3D
IfcExtrudedAreaSolid / ExtrudedDirection > IfcDirection
IfcAxis2Placement3D / Location > IfcCartesianPoint
IfcAxis2Placement3D / Axis > IfcDirection
IfcAxis2Placement3D / RefDirection > IfcDirection
表において、少なくとも5種類のクラスのインスタンスを生成する必要があることが分かる。 壁や窓は簡便のため単層とした。しかし、実際には、例えば、壁は構造材、仕上げ材、断熱材等から成るため、複層とすることもできる。

4.4.2 熱貫流率の表現
建築モデルと熱負荷計算の連携を想定すると、熱貫流率の表現方法は、例えば第3章で示した「設備IFCデータ利用標準」のような関係者による合意に基づくことが望ましいが、現在は合意がない。そのため、本章では、できるだけ妥当な表現となるよう、次のように考えた。
熱貫流率は壁等のプロパティセットとして表現するのが妥当であり、そのために、名称、単位、注記等を決める必要がある。
まず、名称は、壁等を単層としたため、全体としての熱貫流率を表現するものとして、空調・衛生設備業界で一般的に利用されている図書を参考として「Overall Heat Transfer Coefficient」とした6)。

6) 紀谷文樹, 酒井寛二, 前島健, 伊藤卓治: 建築設備実用語辞典改定版, 井上書院, 2005.10

また、熱貫流率の単位はW/(m2K)である。IFCではW、m2、K等の単位はIfcUnitとして定義されているが、W/(m2K)の単位は定義されていない。単位が定義されていない場合は、定義されている単位を用いて組立単位、即ちIfcDerivedUnitとして定義できる。仕様書をもとに、組立単位に係るクラスを抽出したもの(既出除く)を表4.4に示す。
表4.4 組立単位に係るクラス
クラス (注: クラス /アトリビュート >参照クラス)
IfcPropertySingleValue / Unit > IfcDerivedUnit
IfcDerivedUnit / Elements > IfcDerivedUnitElement
IfcDerivedUnitElement / Unit > IfcSIUnit
表において、少なくとも3種類のクラスのインスタンスを生成する必要があることが分かる。
また、注記は「Watt per square meter Kelvin」とした。
熱貫流率以外の熱特性、例えば、熱容量等を表現する場合も、同様である。

4.4.3 建築モデル作成ソフトの開発
方針に基づき、建築モデルを作成するソフトを、マイクロソフト社の表計算ソフトExcel2010上で実行できるVBAにより開発した。入力画面を図4.5.1、4.5.2、4.5.3、に示す。入力項目が多いため、複数のシートを使用している。
図4.5.1 建築モデル作成ソフト(1)
図において、建築部材の各部の寸法を設定できることが示されている。
図4.5.2 建築モデル作成ソフト(2)
図において、建築部材の作成及び寸法調整の要否を設定できることが示されている。
図4.5.3 建築モデル作成ソフト(3)
図において、案件・敷地等の情報を設定できることが示されている。このうち、敷地の位置は緯度・経度によって設定できるため、地理情報システムとの連携もできる。緯度・経度の最小単位は100万分の1秒、即ち、地球の円周を約4万kmとして、赤道上で約0.03mmの精度を持つ。
図4.5.1、4.5.2、4.5.3において、自由度の高い建物モデルを作成するため、入力すべき建物情報も多岐に渡ることが分かる。しかし、入力すべき情報にはデフォルト値を設定できるため、実際に入力が必要な情報は最小限度である。もちろん、建物モデルを手動で入力することに比べれば、入力の手間ははるかに少なくて済む。

4.5 開発結果及び確認
(1) 形状の確認
作成されるBIMデータはIFC形式としているため、同形式に対応したソフトで表示・編集が可能である。作成した建物モデル(地上2階及び地下1階)の3次元形状を図4.6に示す。なお、表示にはDDS IFC Viewerを利用した。
図4.6 作成した建築モデル
図において、建築要素として床、柱、梁、壁、開口、窓、庇等が作成されていることを確認できる。なお、通り芯も作成されているが、DDS IFC Viewerでは表示されていない。
また、柱、梁、床は図4.7のようにモデル化している。
図4.7 柱、梁、床のモデル化(断面図)
図において、床は柱・梁に優先している。また、柱・梁の上部の床は上階に属するものとしている。

(2) 熱貫流率の確認
また、作成した建物モデルの熱貫流率を図4.8に示す。なお、表示にはDDS IFC Viewerを利用した。
図4.8 壁の熱貫流率
図において、壁の属性として熱貫流率が設定されていることを確認できる。
また、熱貫流率の単位に関連するインスタンスを図4.9に示す。なお、表示にはSecom IFC Tree Viewerを利用した。
図4.9 壁の熱貫流率
図において、IfcUnitとして定義されているW、m2、Kの単位により、IfcDerivedUnitとしてW/(m2K)の単位が定義されていることを確認できる。また、W/(m2K)が熱貫流率の単位として設定されていることを確認できる。

(3) 他のソフトでの読み込み
作成したデータが広範囲に流通しうるかどうかを確認するために、設備CADソフトによる読込・表示を行い、形状と属性を確認した。また、形状や属性が一致しない場合、IFCデータの構造や値の違いを調査・比較して修正を加えた。
建築CADソフト及び設備CADソフトで読込・表示を行った結果を図4.10、4.11、4.12、4.13に示す。
図4.10 建築CAD注1)による読込・表示

注1) グラフィソフトジャパン(株), ArchiCAD 15 Trial

図4.11 建築CAD注2)による読込・表示

注2) Google, SketchUp

図4.12設備CAD注3)による読込・表示

注3) (株)四電工, CADEWA Real 2013

図4.13 設備CAD注4)による読込・表示

注4) (株)ダイテック, CADWe'll Tfas 6

図において、建築CAD及び設備CADソフトでも、同様の形状が表示されていることを確認できる。図4.10で用いた建築CADでは通り芯も表示されている。同じデータでも、通り芯のようにソフトによって表示されたりされなかったりするものがあるため、複数のソフトで確認することが重要である。なお、図4.11で用いた建築ソフトはIFC形式のデータを直接読み込むことができないため、変換ソフト注5)を用いて、データ形式を変換している。

注5) SU Podium: IFC2SKP

以上により、作成した建物モデルの3次元形状及び属性に誤りがないことを確認した。 他のCADソフトで表示・編集ができるため、本ソフトでは対応できない詳細な作り込み等は他のソフトで行うことができる。

4.6 考察

(1) 空調熱負荷計算用建築モデル
生成した建築モデルからは熱負荷計算で必要な建築要素の面積や方位、熱貫流率等の熱特性を取得できる。ただし、このうち面積については、取得した後に、一部読み替えが必要である。その理由は、空調熱負荷計算では、通常、柱や梁は壁と見なすためである。BIM対応の熱負荷計算ソフトでは、自動的に読み替えがなされることが期待されるが、それ以外のソフトでは、連携の際に読み替えの手間が生じる。
本ソフトでは、建築要素の寸法や、作成の要否をパラメータとして与えることができるため、例えば、柱や梁のない建築モデルを作ることができる。これを図4.14に示す。なお、表示にはDDS IFC Viewerを利用した。
図4.14 柱と梁のない建物モデル
図において、外壁面には柱と梁がなく、壁、窓及び庇だけが示されていることを確認できる。これにより、柱や梁の面積の読み替えを不要にできる。意匠側で建築モデルが変更される都度、そのような読み替えを行うのは、さらに手間がかかるため、大きな利点がある。

(2) 複層の壁等の表現
壁は構造材、仕上げ材、断熱材等から成るため、複層として扱いたい場合がある。例えば、代表的な熱負荷計算ソフトの一つであるHASP注7)は、壁を複層として扱い、各層の材番と厚さを設定できる。材番は各種の材料をコードで表現したもので、材料名、熱伝導率、容積比熱、密度が決められている。

注7) 動的熱負荷計算プログラムHASP / ACLD /8501

IFCは複層の壁等を表現することができる。仕様書をもとに、層に係るクラスを抽出したものを表4.5に示す。
表4.5 層に係るクラス
クラス (注: クラス /アトリビュート >参照クラス)
IfcMaterialLayerSet / MaterialLayers > IfcMaterialLayer
IfcMaterialLayer / Material > IfcMaterial
IfcMaterialLayer / LayerThickness > IfcPositiveLengthMeasure
表において、少なくとも2種類のクラスのインスタンスを生成する必要があることが分かる。
全体をIfcMaterialLayerSetで、また、各層をIfcMaterialLayerで表現し、例えば、材番をIfcMaterialLayerのアトリビュートのMaterialで、また、厚さを同じくLayerThicknessで表現することにより、複層の壁を表現できる。これにより、例えば、HASPとの連携が容易になる。

(3) 気流計算(CFD)ソフトとの連携
気流計算は、代表的な空調・衛生シミュレーションの一つである。実務では、空調熱負荷計算は精度の違いこそあれ通常は実施されるが、気流計算は必ずしも実施されていない。しかし、機器の選定や配置を決める上で、また、環境を評価する上で、気流計算を実施することが期待される。気流計算ソフトは近年、性能の向上と価格の低下が著しいが、データ入力の手間が障害となって、実務で広く利用されるまでには至っていない。建築モデルを簡易に作成できれば、実務での利用が大きく進む可能性がある。
そのため、空調熱負荷計算と気流計算の連携を想定し、BESTEST注7)のサンプルデータとして提供される建物の形状を本ソフトで作成した後、気流計算ソフトで読込・表示を行った結果を図4.15に示す。

注7) BESTEST Case900

図4.15 気流計算(CFD)ソフト注8)による表示

注8) (株)アドバンスドナレッジ研究所, FlowDesigner

図において、作成した建築モデルが気流計算ソフトでも正しく表示されていることを確認できる。これにより、計算の準備が簡略化され、計算の実施を早められる。さらに、建築モデルに第3章で述べた制気口の部材を配置して提供できれば、より早く計算を実施できる。

4.7 まとめ

本章では、空調・衛生設備におけるシミュレーションに必要な形状及び属性を持つ簡易建築モデル作成手法の開発について述べた。
具体的には、
BIMの用途としては空調熱負荷計算を想定した。
建築要素として床、柱、梁、壁、開口、窓、天井、庇等を作成したほか、壁と窓には熱貫流率の属性を設定できることを示した。
建築要素の寸法や、作成の要否等はパラメータとして与えることにより、建築モデルの作成において高い自由度を確保できることを示した。
また、併せて、空調熱負荷計算に適した、例えば、柱や梁がない建築モデルを作成できることや、作成した建築モデルを気流計算ソフトで利用できること等を示した。
これにより、意匠側から建築モデルを提供されない段階でも、設備側で建築モデルを作成し、BIMに対応した空調・衛生シミュレーションソフトを用いて、精度の良い検討を行うことができ、また、建築モデルの変更が頻繁に行われても、都度、設備側で建築モデルを作成し直せば良いため、変更に対応する手間も最小限度にできる。
また、設備側で作成した建築モデルとそれを用いたシミュレーションの結果を意匠側に提供することにより、意匠側とのコミュニケーションをより円滑に進めることが期待できる。
また、BIMにおける開発を行う際には、まず元になる建築モデルが必要になる。しかし、セキュリティの面から、実案件の建築モデルを使用することが難しくなっている。建築モデルを簡易に作成できれば、開発の進展にも寄与する。 なお、本章は主要な建築部材を対象としたが、今後は、設備にとって重要なシャフトや内壁への適用を進めていくことが必要であると考える。