番外編(94-2)、続、降れば土砂降り(20081115)


イロイロあったが、とりあえず列車には乗れた。ここまでガイドしてくれた旅行社の人は見送りに回る。
さて、この列車、ハノイ発ラオカイ行きのSP7。ハノイを夜9時頃に出発して、ラオカイには朝6時頃に到着する。
ラオカイはハノイから北西に約300km離れた中越国境近くの街。ちなみに今回の目的地は、そこから車で1時間ほどのサパという町。そこは、いわゆる一つの有名観光地なのである。
写真 ハノイ発ラオカイ行きSP7列車の切符

寝台は上下2段、左右2組で4人1室。日本の寝台にも似たものがあるが、こちらは廊下とは壁と扉で完全に区切られていて鍵もかかる。ただし、個々の寝台はカーテン等で仕切られていない。寝台には枕と寝袋。寝台の手すりが低くてちと心配だが、落ちることはあるまい。
内装は木質。窓際にはこれも木質のテーブルがあり、水、果物、つまみ、手拭、歯ブラシなどが置かれている。照明はもちろんのこと空調も完備だ。総じて、悪くはない。
写真 SP7列車の寝台車の車内(2008年10月31日21時20分頃、ハノイ駅にて)

本来なら、早速車内をウロウロして写真を撮ったりするところだが、今はズクズクの靴を何とかしなければならないのだった。靴と靴下を脱いで足を拭き、備え付けのスリッパに履き替える。靴の中は軽く拭き、同行する人に分けてもらった新聞紙を詰める。明日の朝までに乾いてくれると良いけれど。
後始末をしている間に列車は発車。残り二つの寝台は空いたまま。途中で乗ってくるのだろうと思ったが、結局終点までそのままだった。
ロンビエン駅は通過。続いてロンビエン橋を渡る。川面は見えないが、この大雨で増水しているのは間違いなく、古い橋だけに正直早く渡り切って欲しいと思ったりした。
写真 ロンビエン橋(2008年10月31日21時30分頃、ロンビエン駅付近にて)

車両には個室が五つあり、その全てに乗客が居た。こんな大雨でも旅行をキャンセルしないツワモノが大勢居るということらしい。
車両の一端には売店があり、そこで缶ビールを買い同行する人と飲む。ぬるいビールだが心地よい。考えてみれば、ずっと緊張状態だったから無理もない。
もう一端にはトイレがあり、シャワー付き洋式便器と手洗器がある。中はそれなりにきれいに掃除されていて何の問題もない。
さて、そろそろ寝るとするか。ワタシの寝台は上段。梯子はなく、ステップに足を掛けてヨイショと登る。冷房が効きすぎて少し寒く、セーターを着て寝袋に潜り込む。
図 SP7列車の寝台車の見取り図

寝たのは10時過ぎ。夜中に列車が停車したり激しいアップダウンがあったりして、何度か目ざめてはまた眠る。最後に起きたのは5時半頃。冷房は止めてくれたようだ。
廊下に出て外を眺めていると、少しずつ景色が明るくなってくる。雨はあがっていて、窓を少し開け顔を覗かす。まだ暗い中に車両の灯りが浮かんで、うっとりとする風情だ。
写真 SP7列車からの車窓(2008年11月1日5時50分頃、ラオカイ駅近郊にて)

さらに明るくなるにつれて、人の姿がどんどん増えてくる。この日は土曜日で、通学中の子供達がたくさん見える。中には、こちらを見て手を振ったり笑ったりしてくれる子供もいる。自分も昔はそうだったかも。
時々、紅(ホン)河も間近に姿を見せる。ハノイからラオカイへの路線は紅河を遡るルートなのだ。河口から300km以上も上流でありながら、川幅はなお100mほどもある。さすがに大陸的だ。
この頃には他の乗客も起きてきて、皆飽きずに流れいく景色を眺めていた。
写真 SP7列車からの車窓(2008年11月1日6時10分頃、ラオカイ駅近郊にて)

線路脇には標識、おそらくはハノイからの距離を示しているのであろう。290kmを越えているのが分かる。そろそろ終点のラオカイが近い。
写真 ベトナム国鉄の距離標識(2008年11月1日7時頃、ラオカイ駅近郊にて)

ラオカイ到着は予定より約1時間遅れ。でも、途中で立ち往生もあるかと覚悟していたので、それぐらいは何でもない。
荷物を担いで下車。ようやく車両の写真をゲット。車両番号はAn11713。クリーム地に茶色のストライプとFANXIPAN EXPRESSの表記。今までに見たことのない塗りだ。
写真 SP7列車の車両(2008年11月1日7時10分頃、ラオカイ駅にて)

それにしても、靴が意外と乾いてくれていて、うれしい。どうやら新聞紙が効いたようだ。同行する人が用意のよい人で助かった。
改札口には旅行社の別の人が出迎えてくれていた。駅を出て車を待つ。駅前は列車で到着した人、彼らを迎えに来た人、彼らに声をかける運転手さん、売り子さんなどであふれていた。
写真 ベトナム国鉄の駅舎(2008年11月1日7時10分頃、ラオカイ駅にて)

【初利用駅】ベトナム国鉄ラオカイ線/ラオカイ駅
【初乗り】ベトナム国鉄ラオカイ線/ハノイ駅〜ラオカイ駅
【完乗】ベトナム国鉄ラオカイ線/ハノイ駅〜ラオカイ駅


追記(20081122)

調べてみると、FANXIPAN(ファンシーパン)は、サパの近くにある山の名前。ベトナム語では、Phang Xi Pang。標高3148mでベトナムの最高峰。
つまり、FANXIPAN EXPRESSは「富士急行」みたいなものですね。


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